春
春を告げる使者~ハクチョウ
「コー! コー!」 空のかなたから、大きな鳴き声が響き渡る
まだ冷え込みが強い、美瑛の春の朝・・・・寒い!!
まだ雪が残り、朝晩は氷点下まで気温が下がる日も珍しくありません。
ぬくぬくの布団の中で、「あと5分だけ!」と丸くなりたいですね・・・
「コー! コー! コー!」
突然聞こえてきた天然の目覚まし時計の音に、思わず目が覚めます。
これはいったい何の音?
窓から外を見上げると、壮観な光景が目に飛び込んできました!
「わー! ハクチョウだ!!」
美瑛に待望の春がやってきた瞬間です。
春の来訪客 ~ ハクチョウ
日本で見られるハクチョウは、渡り鳥です。
シベリアで繁殖しますが、冬は極寒の地を脱出して日本列島の海岸エリアへ移動してきます。
そして2月、ハクチョウはまた繁殖のため、シベリアの涼しい夏を目指して北へと向かいます。
その途中、3月から4月にかけて、ちょっと北海道に立ち寄っていきます。
ここ美瑛では、ハクチョウの大きな鳴き声が、待ちに待った春の訪れを告げるんですね!
噴煙を上げる十勝岳をバックに、数百羽のハクチョウが集まります
ハクチョウは、美瑛の住民にもとても親しまれています。
春の到来を告げるということだけでなく、人が近づいてもすぐに逃げず、その姿を間近で見ることができる貴重な動物だからでもあります。
夏は葉っぱが生い茂り、動物はその姿を隠しやすくなるので、こんなによく野生動物の姿を観察できるのは、とても珍しいチャンスなのです!
さて、美瑛に来たハクチョウは、いったい何をするのでしょうか?
ちょっとだけハクチョウの後を追いかけて、その様子を覗いてみましょう・・・
ハクチョウのごちそうとは??
朝の7時。
安全な場所で夜を過ごしてから、ハクチョウは美瑛の市街地の上を飛んでいきます。
「コー! コー!」という鳴き声や、「パタパタ!」という羽音を立てながら、平らな田んぼのエリアに着陸します。
田んぼの雪が融けて、雪どけ水の泥んこの中で、ハクチョウが楽しそうにバシャバシャやっています。
ハクチョウたちは、泥水の中をつついて何を探しているのかな?
ヒントは、人間も大好きな食べ物です・・・・
ハクチョウの白い姿が、田んぼの水面にも映ってキレイですね
ハクチョウの主食は水草ですが、春の美瑛はまだまだ寒いので、水中に潜るのは大変ですよね・・・・
そこで、この時期は畑のおこぼれをちょうだいするんですね!
数百羽のハクチョウが美瑛の田んぼや畑に集まり、落ちているお米や穀物を探しています。
ハクチョウは、日本人と同じようにお米好きだったんですね!!
しかも、お米だけではありませんよ!
カットされた茎の跡が残るトウモロコシ畑にも、ハクチョウたちは集まってきます。
ちなみに美瑛には、人間用のほかに、牛のエサ用に育てられている広大なトウモロコシ畑もあります。
人も、牛も、ハクチョウも、コーンはみんな大好きですね!
「そう! 僕らもコーン大好き! イエーイ!!」
ハクチョウのねぐら
お米やコーンでお腹をいっぱいにしたハクチョウは、日が暮れる前にねぐらへと戻ります。
何羽かの集団をつくって、「コー! コー!」と呼び合いながら飛んでいきます。
美瑛では、観光牧場のファームズ千代田の近くにある水沢ダムに、水鳥たちが集まってきます。
水沢ダムは、晴れた日には十勝岳連峰のパノラマが見渡せる絶景の場所です!
水沢ダムに湖面に映る、十勝岳連峰の姿も美しい
夕方4時ごろ、ハクチョウたちが次々とダム湖の上に舞い戻ってきます。
ハクチョウがやってきたことは、その姿が見えなくても鳴き声でわかります。
写真を撮ろうと待ち構えているカメラマンたちには、とってもわかりやすくて便利です。
鳴き声を聞けば、ハクチョウがどこから飛んでくるかわかるので、素人でもカメラを向けるのが簡単です!
湖面に着水する寸前には、キレイな編隊を組んだまま十勝岳連峰の山並みの前を通ってくれるので、山とハクチョウのベストショットを撮ることができますよ!!
十勝岳の噴煙の前を飛ぶ、ハクチョウの編隊飛行
大きな集団だと、リーダーを先頭にV字を組んで、大空から徐々に高度を下げていきます。
水面に近づいてくると、水かきのついた足を大きく広げて空気抵抗を増やし、ブレーキをかけます。
そうやってスピードを落とし、降りたい目標地点に向かってコントロールしやすくします。
着水の瞬間に水かきを水面に押し付けると、水が噴水のようにザザザー!と上がります。
なんて素晴らしい光景なんでしょう!
ザザザーーー!!
ハクチョウは、同じ相手と一生を共にしますので、ダムの水面を並んで泳ぐペアや、子供連れのファミリーの姿を見ることができます。
ファミリーが並んで泳ぐ姿は、なんだか家族旅行みたいですね!
成鳥2羽(白)と幼鳥2羽(灰色)。たぶん親子かな?